空き家を相続する場合どうする?売る・貸す・放棄するの損得を税理士が解説

query_builder 2026/06/08
空き家を相続する場合どうする?売る・貸す・放棄するの損得を税理士が解説


親が亡くなったあと、実家がそのまま空き家になってしまった——そんな状況に直面している方は、今とても多くいます。 

国土交通省のデータによると、空き家を取得した経緯の半数以上が相続によるものとされており、この20年で全国の空き家数は約1.9倍に増加しています。

ただ、空き家を相続したあとに「とりあえずそのままにしておこう」と放置してしまうと、思わぬ税金の負担や近隣トラブルが発生することがあります。 

逆に言えば、早めに動くことで大きな節税ができたり、手続きがぐっとスムーズになったりする場面もたくさんあります。

この記事では、空き家を相続した場合の選択肢(売る・貸す・放棄するなど)を、それぞれの損得も含めてわかりやすく解説します。 

税理士の目線から「知らないと損する」ポイントもしっかりお伝えするので、ぜひ最後まで読んでみてください。




空き家を相続したらまずするべきこと3選

相続が発生したとき、やるべきことは山ほどあります。 そのなかで空き家については「後回し」にされがちですが、早めに動いた方がメリットが大きい場面がたくさんあります。

まず最初にやるべきことを3つ整理しておきます。

相続税の申告期限を確認する

相続が発生したら、まず「いつまでに何をしなければならないか」を把握することが大切です。 

特に重要なのが相続税の申告期限で、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告・納税を済ませる必要があります。

 この期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税といったペナルティが発生することがあるため、注意してください。

下表に、相続発生後の主なスケジュールをまとめました。

期限の目安

やるべきこと

3ヶ月以内

相続放棄・限定承認の検討(家庭裁判所への申述)

4ヶ月以内

被相続人の準確定申告(収入があった場合)

10ヶ月以内

相続税の申告・納税、遺産分割協議の完了

3年以内

相続登記(名義変更)の完了

3年以内

空き家売却で3,000万円控除を使う場合の売却期限

やるべきことが多く期限もそれぞれ異なるため、相続が発生したら早めに税理士に相談して全体のスケジュールを整理することをおすすめします。 

「何から手をつければいいかわからない」という状態が一番危険です。 まず専門家に相談することで、大切な期限を見落とすリスクを大きく減らせます。

相続登記(名義変更)を行う

2024年4月1日以降、相続した不動産の登記(名義変更)は法律上の義務になりました。 相続を知った日から3年以内に登記を申請しないと、10万円以下の過料(罰則)が科せられる可能性があります。 

これは過去に相続した不動産にも適用されるため、「ずっと名義変更していない実家がある」という方も要注意です。

実務上、売却や活用を進めるためには相続登記が必要になります。そのため、登記を済ませないと、空き家を売ることも、人に貸すことも、解体することもできません。 

まず最初のステップとして、相続登記を行うことを覚えておいてください。

 登記の手続きは司法書士に依頼するのが一般的で、費用は登録免許税(不動産評価額の0.4%)のほか、司法書士への報酬として5〜10万円程度かかることが多いです。

 書類の準備から申請まで、プロに任せた方がスムーズに進むケースがほとんどなので、まずは司法書士に相談してみることをおすすめします。

空き家の現状と資産価値を確認する

相続登記と並行して、空き家がどんな状態にあるかを確認しておきましょう。 具体的には、以下のような点をチェックします。

  • 建物の築年数や劣化状況(雨漏り・シロアリ・傾きなど)

  • 土地・建物の固定資産評価額(役所で確認できます)

  • 周辺の不動産相場(売れるのか、いくらで売れるのか)

  • ライフラインの状況(電気・ガス・水道が止まっているか)

建物の状態が良く立地も悪くなければ、売却や賃貸に向けて動けます。

 一方、かなり古くて傷みが激しい場合は、解体して更地にしたり、後述する国庫帰属制度を使うことも視野に入れる必要があります。 

「今、この家はどんな状態か」をまず見極めることが、すべての判断の出発点です。




放置すると危険?3つのリスク

「とりあえず何もしない」という選択をする方も少なくありません。 しかし空き家をそのまま放置していると、時間が経つほどデメリットが大きくなっていきます。

特に注意してほしい3つのリスクを詳しく説明します。

固定資産税が最大6倍になることがある

空き家の所有者には、毎年固定資産税がかかります。 通常、建物が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用されて、固定資産税が最大1/6に軽減されています。 

ところが、建物の管理状態が悪くなり、自治体から「特定空家」に指定されてしまうと、この特例が適用できなくなります。

状態

固定資産税の扱い

通常の空家

住宅用地の特例で最大1/6に軽減

特定空家に指定された場合

特例が外れ、最大6倍に跳ね上がる

特定空家で勧告を受けた場合

行政代執行(強制撤去)の対象になることも

特定空家とは、倒壊のおそれがあったり、衛生上の問題があったり、景観を著しく損ねるなど、周囲への悪影響が大きいと認められた空き家のことです。 

一度指定されると自治体から改善を求める指導が入り、従わない場合は強制的に取り壊されることもあります。 

その費用は所有者の負担となるため、税金増加と撤去費用が重なる最悪の事態を避けるためにも、適切な管理が欠かせません。

建物の資産価値がどんどん下がる

人が住まなくなった建物は、みるみると傷んでいきます。 一般的に、木造の一戸建ては築20年で建物の価値がほぼゼロになると言われています。 

さらに放置が続くと、屋根や外壁の劣化、湿気によるカビ・腐食、シロアリ被害などが加速していきます。

いざ売ろうとしたときに「こんなに傷んでいるなら買い取れない」と言われてしまうこともあります。 解体費用だけで木造一戸建ては300万円以上かかるケースも珍しくありません。 

「いつか売ればいい」と思っていても、資産価値が残っているうちに動き出すことが、結果的に大きな差につながります。

近隣への迷惑・賠償リスク

空き家が荒れると、近所への迷惑にもなります。 草木が隣家に越境したり、害虫や害獣が発生したりすることがあります。 

さらに深刻なのは、台風や地震で壁や屋根の一部が落ちて近隣の家や通行人に被害を与えた場合、所有者として賠償責任を問われるリスクがある点です(民法第717条)。 「自分の家だからほっておいていい」というわけにはいきません。

なお、遠方に住んでいるなど管理が難しい場合は「空き家管理サービス」を利用する方法もあります。 業者が定期的に建物の確認・清掃などを行ってくれるサービスで、月額5,000〜20,000円程度が相場です。 

売却や活用の方向性を検討するまでの間、こうしたサービスを活用して最低限の管理を続けることをおすすめします。




空き家を「売る」場合に知っておくべきこと

空き家に資産価値がある場合、もっともシンプルな選択肢が「売却」です。 売れば固定資産税の負担もなくなり、管理の手間からも解放されます。

売却にはメリットが多い一方、知らないと損する税金の落とし穴もあります。ここでは特に重要なポイントを詳しく説明します。

相続開始から3年以内の売却で3,000万円控除が使える

空き家を売ったときに利益が出ると、通常は「所得税(譲渡所得)」という税金がかかります。 ところが一定の条件を満たすと、売却利益から最大3,000万円を差し引いてから税金を計算できる特例があります。 

要するに「親が住んでいた家を相続して売ったときの税負担を大きく減らせる制度」のことです。

主な適用条件は次のとおりです。

  • 昭和56年5月31日以前に建てられた建物であること

  • 相続開始の直前に、被相続人(亡くなった方)が住んでおり、かつ同居者がいなかったこと

  • 相続してから事用・賃貸用・居住用に使っていないこと

  • 相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売ること

  • 売却代金が1億円以下であること

例えば、譲渡所得が3,000万円発生した場合、特例の適用有無によって所得税額は以下のように変わります。


ケース

課税対象となる譲渡所得所得税率

所得税額

特例あり(3,000万円特別控除適用)

0円

-

0円

特例なし(長期譲渡所得・所有期間5年超)

3000万円

15%

450万円

特例なし(短期譲渡所得・所有期間5年以下)

3000万円

30%

900万円

3年という期限があるため、「いつか売ろう」とのんびり構えていると、この節税チャンスを逃してしまいます。 


売却を考えているなら、できるだけ早く動き始めることが重要です。

取得費と所得税(譲渡所得)の計算で知っておきたいこと

売却益(譲渡所得)は「売却価格 − 取得費 − 譲渡費用」で計算します。 相続した不動産の取得費は、原則として被相続人が購入したときの価格を引き継ぎます。 

ただし、購入当時の価格がわからない場合は「売却価格の5%」を取得費とみなす方法があり、そうすると課税対象が大きくなってしまいます。 

当時の売買契約書や登記関係の書類が残っていれば、必ず探しておきましょう。

また、所得税(譲渡所得)の税率は所有期間によって変わります。所有期間が5年以下の場合は税率30%、5年超の場合は15%です。 

重要なのは、相続した不動産の所有期間は「被相続人が取得した日」から引き継がれる点です。

相続してすぐ売っても、親が長年住んでいた実家であれば5年超として長期譲渡(15%)が適用されます。

2024年以降は売却要件が一部緩和されました

2024年1月1日以降の売却については、この特例の要件が一部緩和されました。 

以前は「売る前に耐震補強するか、建物を解体すること」が売主側の条件でしたが、改正後は「売却後に買主が耐震補強または解体を行う」場合でも特例が適用されるようになっています。

 これにより売主側が解体費用(100万円前後)を負担しなくても特例を使えるケースが増え、売却のハードルが下がりました。

項目

2023年以前

2024年以降

耐震補強・解体のタイミング

売主が売却前に対応

買主が売却後に対応でもOK

相続人3人以上の控除額

1人あたり3,000万円

1人あたり2,000万円に変更

申告方法

確定申告が必要

確定申告が必要(変更なし)

これにより売主側の費用負担が減り、特例を使いやすくなりました。 ただし適用を受けるためには確定申告が必要です。 

税理士に依頼することで、申告漏れのリスクを防ぎながら正確に手続きを進められます。




空き家を「貸す・手放す」場合に知っておくべきこと

売却以外にも、「賃貸に出す」「手放す」という選択肢があります。 それぞれにメリット・デメリットがあり、状況によって向き・不向きが変わります。

特に賃貸は「収入が得られる」というメリットの裏に、大きなデメリットが潜んでいます。注意点をしっかり整理しておきましょう。

貸す場合:収入は得られるが3,000万円控除は使えなくなる

賃貸に出すと、毎月安定した家賃収入が見込めます。 空き家の維持コストを家賃でまかなえるうえ、建物を定期的に使うことで劣化を遅らせる効果もあります。 

ただし、賃貸に出すためには一定の準備が必要です。

  • リフォームやクリーニング費用(数十万〜数百万円かかることも)

  • 入居者がいない期間の維持費・修繕費の自己負担

  • 貸主としての管理責任(設備の修繕対応など)

  • 家賃収入には毎年所得税がかかる

特に古い建物はリフォームに費用がかかりながら入居者が見つかりにくいケースがあります。 

地方では賃貸需要自体が低い地域も多いため、事前に不動産会社に相談して需要を確認することが重要です。

最も大切な注意点は、空き家を賃貸に出してしまうと「3,000万円特別控除」が使えなくなることです。 

「まず貸してあとで売ればいいか」と考えていると、大きな節税チャンスを失います。 

売却か賃貸かは最終的な税負担に大きく影響するため、自己判断せずまず税理士に相談してみることをおすすめします。

手放す場合:「相続放棄」と「国庫帰属制度」の違いを理解する

売れない、貸せない、維持も難しい場合は、空き家を手放す方向で考えることになります。 2つの方法の違いを整理しておきましょう。

項目

相続放棄

相続土地国庫帰属制度

手放せるもの

相続財産すべて(空き家だけは不可)

土地のみ(建物は解体が必要)

プラスの財産

預貯金なども含め放棄

影響なし

手続き先

家庭裁判所

法務局

期限

相続を知ってから3ヶ月以内

期限なし

費用

申述費用のみ(数百円〜)

審査手数料+負担金(宅地は原則20万円)

管理義務

次の管理者が決まるまで残る場合あり

承認後は国が管理

相続放棄は「相続財産のすべてを放棄する手続き」で、空き家だけを手放すことはできません。 預貯金などのプラスの財産も一緒に手放すことになるため、慎重な判断が必要です。 

また、2023年4月の民法改正により、放棄後の管理義務は「放棄の時点で財産を現に占有している者」に限定されました(民法第940条)。

被相続人と別居していた場合は原則として管理義務は生じませんが、同居していた場合などは引き渡しが完了するまで保存義務が残ることがあります。

一方、相続土地国庫帰属制度(2023年4月27日スタート)は一定条件を満たした土地を国庫に引き渡せる制度です。 

建物がある状態では申請できず、解体(木造で100万円前後)と負担金を合わせた費用がかかりますが、長期的な固定資産税・管理コストと比較して選ぶ価値がある場合もあります。




相続した空き家に使える、福井県の税の特例まとめ

福井県の空き家率は15.55%と全国平均(13.84%)を上回っており、管理が行き届いていない放置空き家はこの25年で2.3倍に増加しています。 

敦賀市でも「つるが空き家インフォ」による活用促進が進められていますが、相続した空き家をどう動かすかは税負担に直結します。 

正しく特例を活用することで大きな節税につながる可能性があるため、「自分の場合は使えるのか?」をここで改めて確認しておきましょう。

小規模宅地等の特例(相続税の軽減)

相続税を計算するときに使える特例で、節税効果がとても大きい制度です。 被相続人が住んでいた土地(特定居住用宅地等)を相続した場合、330㎡までについて相続税評価額を80%減額できます。

分類

限度面積

減額割合

特定居住用宅地等(自宅)

330㎡

80%

特定事業用宅地等(事業用)

400㎡

80%

貸付事業用宅地等(賃貸)

200㎡

50%

ただし、亡くなる直前から空き家だった場合は使えません(老人ホームや病院への一時的な入居を除く)。 

また子どもが相続する場合は「家なき子特例」の要件をクリアする必要があります。主な条件は以下のとおりです。

  • 被相続人と同居していた配偶者や親族がいないこと

  • 相続開始前3年間、自分や配偶者・3親等内親族の持ち家に住んでいないこと

  • 相続した宅地を申告期限(相続開始から10ヶ月)まで保有すること

  • 相続開始時の居住家屋を過去に所有したことがないこと

要件が複雑なため、「使えるかも」と思ったら早めに税理士に相談することをおすすめします。 

なお、被相続人が施設入居中だったケースでも使える場合があるため、まず専門家に確認してみてください。

3,000万円特別控除と小規模宅地等の特例は併用できる場合がある

相続した空き家を売却するときの「3,000万円特別控除」と、相続税計算時の「小規模宅地等の特例」は、場合によっては併用できるケースがあります。

 たとえば相続税評価額を80%減額したうえで、売却時の所得税(譲渡所得)もゼロにする組み合わせが実現できる可能性があります。

特例名

使うタイミング

効果

申告期限

小規模宅地等の特例

相続税の申告時

評価額を最大80%減額

相続開始から10ヶ月

3,000万円特別控除

売却後の確定申告時

譲渡所得から最大3,000万円控除

売却翌年の3月15日

なお、これらの特例は申告しなければ自動的には適用されません。 確定申告や相続税申告のタイミングで、きちんと手続きを行う必要があります。 

相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内で、この期限を過ぎると延滞税や加算税といったペナルティが発生することもあります。 早めに税理士に相談して準備を始めることをおすすめします。




まとめ

空き家の相続は、放置すればするほど選択肢が狭まり、コストも増えていきます。 この記事でお伝えしたポイントを整理すると、次のとおりです。

  • まず相続登記(名義変更)を3年以内に済ませること

  • 売却を検討するなら「相続開始から3年以内」が節税の大きなチャンス

  • 賃貸に出す場合は3,000万円控除が使えなくなることを覚えておく

  • 相続放棄は「万能な解決策」ではなく、プラスの財産も失うリスクがある

  • 手放したい場合は「相続土地国庫帰属制度」も選択肢のひとつ

  • 小規模宅地等の特例など、相続税を減らせる制度も上手に活用する

空き家をどうするかは、建物の状態・立地・相続した財産全体のバランス・相続税の有無など、さまざまな条件によって変わります。 

相続が発生してから10ヶ月以内に相続税の申告期限が来るため、「気づいたら期限が過ぎていた」「特例を使えたのに使い忘れた」ということが起きないよう、早い段階から税理士と一緒に動き出すことをおすすめします。




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